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CKDに特化した地域連携パスの運用によって
CKD診療の重要性に対する理解が深まる

瀬田 公一 先生

独立行政法人国立病院機構 京都医療センター
腎臓内科 診療科長・地域医療部長

瀬田 公一 先生

辻 一弥 先生

辻クリニック 院長
一般社団法人 伏見医師会 会長

辻 一弥 先生

八幡 兼成 先生

日本赤十字社 大阪赤十字病院
腎臓内科 主任部長

八幡 兼成 先生

人をつなぐ 医療をつむぐ

京都市伏見区の伏見医師会では、京都医療センターの腎臓専門医と共に「伏見CKD連携パス」を作成し、2011年2月から運用を開始している。もともと、伏見医師会では喘息、COPD、糖尿病、循環器(慢性期)、胃がん・大腸がんの術後に関する地域連携パスを運用していたが、超高齢社会の到来を見据え、慢性腎臓病(CKD)診療の地域連携にも積極的に取り組むようになったという。CKDに特化した連携パスは、どのようにして生まれ、どのようにして運用されているのか。「伏見CKD連携パス」の作成・運用における中心的役割を担った八幡兼成先生と瀬田公一先生、そして伏見医師会会長の辻 一弥先生に、CKD連携パスをめぐる地域での取り組みについて話を伺った。

CKD診療における京都市伏見区の現状と
「伏見CKD連携パス」作成の背景

― まず、京都市伏見区の医療体制について教えてください。
辻先生 伏見区は京都市の南部に位置する、人口約28万人の京都市内で最も大きな区で、人口の約30%を65歳以上の高齢者が占めています。地域内には18の病院を含む215の医療機関があり、伏見医師会には約650名の医師が所属しています。そのうち、220名が開業医です。
 伏見区の将来推計人口では、2045年にかけて全体の人口は減少するのに対し、高齢者の人口は増加すると予測されています。また、それに伴って慢性腎不全の患者さんの数が増加し、特に75歳以上の患者さんの増加率が著しくなるだろうと考えられています (図1)。
 このような超高齢社会の到来とCKD患者さんの増加を背景に、伏見CKD連携パスの作成が進められました。
図1 京都市伏見区における慢性腎不全による入院患者数の将来予測
瀬田先生 以前から、伏見区を含む京都市の南部は、腎臓内科の専門医が非常に少ない地域でした。伏見区の人口は東京都港区の人口とほぼ同じですが、腎臓内科の専門医の数は、東京都港区が99人なのに対し、伏見区はわずか10人です(2020年5月27日現在)。ちなみに、京都大学と京都府立大学がある左京区では、人口は伏見区よりも少ない約16万5,000人ですが、専門医の数は58人です(2020年5月27日現在)。伏見区の腎臓専門医がいかに少ないかがよくわかります。
 こうした状況の中で、多くの患者さんを適正にかつ効率よ<診療していくことを目的として、伏見CKD連携パスの作成が試みられたわけです。

「伏見CKD連携パス」はどのように作成されたか?
運用はどのように行っているか?

― 当時、京都医療センターの腎臓内科診療科長だった八幡先生がリードされて伏見CKD連携パスを作成されたと伺いました。実際にはどのように作成されたのでしょうか。
八幡先生 私の前に腎臓内科診療科長を務めていらっしゃった菅原照先生が伏見医師会会長の中山治樹先生に相談し、「伏見CKD医療連携の会」を発足させていました。
 2010年11月に私がその会を引き継ぐと同時に、この伏見CKD連携パスの作成に着手しました。院内の地域医療連携室にも、作成した原案に対する意見をいただくなど協力を得ました。そうして出来上がった原案を伏見医師会や伏見CKD医療連携の会に報告して承認をいただき、2011年2月から運用を開始しています(図2-1)。
 また、付随する書類として、病院とかかりつけ医が連携して診療を行うことを告知する患者さんへの説明書、伏見CKD連携パスの使い方を記載した説明書、CKD啓発パンフレットなども作成しました(図3)。当時から、伏見CKD医療連携の会では定期的に勉強会を開催していたため、この勉強会と伏見CKD連携パスの2つを両輪として、地域のCKD診療の質を高めることを目指しました。
図2-1 伏見CKD連携パス
図2-2 伏見CKD連携パス
― 伏見CKD連携パスやCKD啓発パンフレットなどは、伏見医師会のホームページからダウンロードできるようになっていますね(図4)。
瀬田先生 はい。また、伏見CKD連携パスについては、より使いやすくなるように連携先の先生方の意見を取り入れた改訂も行っています。伏見CKD連携パスを導入してから2年半が経過した時点で、連携先の先生方60名に使用状況や使い勝手に閑するアンケートを行いました。多くの先生が伏見CKD連携パスを認識しており、利用率も高かったのですが、「記載項目が多過ぎる」「記載欄が狭い」「字が小さくて見えにくい」「もう少し簡略化した方が使いやすい」などのご意見をいただきました。
 そこで、初代パスを改訂した2代目パスを作成し、2代目パスに関してもアンケートを行ってさらに改訂を加え、2020年3月に現在の書式となりました(図2-2)。初代パスに比べるとかなり簡略化されており、より使いやすくなっていると思います。
図3 伏見CKD連携パスとセットで運用されているツール(一部抜粋)

大阪赤十字病院にも生かされている
CKD連携パスのノウハウ

― 八幡先生は2020年4月に京都医療センターから大阪赤十字病院に移られましたが、そこでも同様のCKD連携パスを活用されているのでしょうか。
八幡先生 赴任した当初、当院にはCKD連携パスがなかったので、すぐに作成を開始しました。伏見CKD連携パスとほぼ同様の内容ですが、当院の腎臓内科医の意見を参考にして改訂しました。
― 地域の先生方へのCKD連携パスのアナウンスはどのようになさったのでしょうか。
八幡先生 伏見区では伏見医師会と一緒にCKD連携パスの作成を進めましたが、こちらでは大阪赤十字病院で運用しています。連携先の施設へは、紹介された患者さんをお戻しする際にCKD連携パスを発行することで、CKD連携パスの存在をお知らせしています。半ば押し付けという気もしますが、連携先の先生方にも書類に目を通せばその意義はわかっていただけると思うので、ある程度定着するまでは継続して発行していくことが大切だと考えています。もちろん京都でも行っていたように、CKD連携パスの説明書、患者さんへの説明書、CKD啓発パンフレットも添えるようにしています。
図4 伏見CKD連携パスのダウンロード画面

KFRA試験から見えてきた、CKD診療の重要性

― そもそも、なぜかかりつけ医の先生がCKDに留意する必要があるのでしょうか。
八幡先生 CKD診療の重要性が叫ばれ始めた理由としては、CKDが心即管疾患の危険因子であることが広く知られるようになってきたことが大きいと思います。また、高齢社会の進行に伴い透析患者数も増加しています。CKDの初期は無症状であり、進行してからCKDが見つかることも少なくありませんから、かかりつけ医がCKDを拾い上げて管理していくことはとても重要です。また、非専門医と専門医が連携して治療を進めていくことも不可欠だと思います。
― 先生は、かかりつけ医も含めた地域医療の臨床現場で、腎性貧血の治療が適正に行われているかを検討する研究を企画されましたね。
八幡先生 KFRA研究のことですね2)。すでに国内では、約3,000例のCKD患者を対象にした多施設コホート研究であるCKD-JAC研究が行われており、腎疾患専門施設であっても、腎性貧血の治療が十分に行われていない現状が明らかにされています3)。その要因の1つとして、研究実施当時には治療薬がエポエチンのみであったことの関与が推測されます。そこで、かかりつけ医を含めた地域医療の中で長時間作用型の赤皿球造血刺激因子製剤(ESA)発売後の腎性貧血治療の実態を明らかにし、治療目標を意識して治療することが腎予後、主要心血管イベントおよび生命予後の改善につながるかを検討する観察研究を行いました。それがKFRA研究です。
 283例を登録して検討した結果、主要評価項目である血清クレアチニン値が2倍化した患者の数は89例、腎代替療法に移行した患者の数は57例でした。また、平均ヘモグロビン(Hb)値が高いほど腎複合イベントの発生が少なく(p=0.0169、多変量Cox回帰モデル)、ESA投与回数が多いほど腎予後が良いこともわかリました(p<0.001、多変量cox回帰モデル)(図5)。さらに、死亡に影響を及ぼす因子については、平均hb値が高いほど死亡が少ないことを明らかにしています(p=0.0018、多変璽cox回帰モデル)。
 なお、腎臓専門医と非専門医で治療実態に差があるかについても検討しています。その結果、非専門医であってもESAを積極的に投与している医師は一定数おり、Hb値の改善も見られますが、専門医に比べると、投与率もHb値の改善もまだ低いのが現状であることがわかりました。したがって、今後はさらに専門医と非専門医との連携診療を強化して、CKD治療を適正に行っていく必要があると考えています。
図5 腎複合イベント発生に影響を及ぼす因子

伏見CKD連携パスの導入前後で何が変わったか?

― 伏見CKD連携パスの連用を開始してから約9年が経過していますが、導入の前後で何が変わりましたか。
瀬田先生 伏見CKD連携パスを運用していなかった2010年4月~2011年3月の1年間の紹介患者さん212人を基準にすると、1年後の紹介患者さんの数は262人で23.6%、2年後は234人で10.4%増加しました。新規の患者数もそれぞれ14.6%、17.8%増加しています(表)。
 伏見CKD連携パスを運用したことで、CKDに対する認識が地域の中で高くなってきたことがその要因ではないかと考えています。
 CKD診療ガイド2012では、GFR区分がG3b以降の患者については3か月に1回、専門医がフォローすることを推奨しています。しかし、G3b以降であっても軽度蛋白尿(0.15〜0.49g/gCr)の場合は、フォローアップ期間を延長できる可能性もあると考えています。そのため、かかりつけ医の先生方にも蛋白尿を意識していただいた上で、連携を行っていければと思っています。

かかりつけ医、専門医、双方がCKD連携パスをどう評価するか?

― 辻先生は医師会の会長として、またかかりつけ医として、このCKD連携パスをどう評価されていますか。
辻先生 CKDは長期にわたる管理が必要な疾患であり、われわれかかりつけ医が患者さんを診る期間も長くなります。だからこそ、正確な情報をもとに患者さんの診療を続けていかなければなりません。このCKD連携パスの活用は、かかりつけ医が安心して診療を続けることができるよりどころになっていると思います。
― 地域の先生方のCKDに対する意識はいかがでしょうか。
辻先生 確実に高くなっていると思います。そして、CKDだけでなくさまざまな併存疾患を抱えている患者さんに対して、どのような治療を選択していけばよいのか、専門医の意見を参考にできることはありがたいと考えているのではないでしょうか。患者さんが服用している薬剤の中には、腎機能障害のある患者さんには適さない薬剤が含まれていることもあります。CKD連携パスを通じて連携を密にすることで、そうしだ清報についてもやり取りできる点は大きなメリットだと考えています。
― 患者さんを専門医に紹介する際に、特に気をつけていることはありますか。
辻先生 紹介の際には、必ず直近の検査データを提供するょうにしています。例えば、病院のフォローアップ期間が3か月を超えるような場合は、病院に行く前に検査を行っておくことが多いです。ただし、頻回の検査は患者さんの負担になるので、フォローアップ期間が1か月程度であれば、当院で採血することはほとんどありません。
― 紹介を受ける側として、かかりつけ医の先生に望むことはありますか。
八幡先生 辻先生もおっしゃったように、同時期に同じような検査を行って患者さんの負担になることは避けたいですし、医療の効率化やコストの点から考えても検査結果は共有いただけると助かります。CKD連携パスを使用していればコメント欄に記載していただかなくても構いませんし、特にこちらから強く希望することはありません。ただ、こちらが記入した内容については必ず目を通していただければと思います。
表 京都医療センターにおける新規患者数・紹介患者数の推移
― その他に、CKD運携パスを活用していくコツはありますか。
瀬田先生 連携自体をより円滑に行うために心掛けていることになりますが、当院での診察を終えた際には、必ずこちらで次回の予約を取るようにしています。予約が確実に取れることに加え、半年後や1年後の予約をすることで、“見放されているのではない”と思ってくださる患者さんや、“1年間はここに来なくてもいいくらいの状態なのだ”と安心される方もいるからです。加えて、かかりつけ医と専門医がしっかり連携していることを、患者さんが知るきっかけにもなると考えています。

common diseaseとしてのCKDに、これからどう対応していくか?

― 最後に、CKD診療の今後について一言お願いします。
辻先生 超高齢社会では、腎機能低下はもちろん、その他の臓器の機能低下にも注意を払う必要があります。そうした多臓器の障害、あるいは併存疾患をどのように診ていくかは、私たちかかりつけ医にとっても重要な課題だと考えています。腎機能低下が加わると、心血管疾患のリスクも高くなりますから、腎臓専門医と連携することで、そうした患者さんに対する診療の質を高めていければと考えています。そのために、このCKD連携パスは役に立つツールになると思います。
瀬田先生 GFR区分がG3b以降の患者さんの場合は、一度専門医の診察を受けた方が艮いと考えています。結果的に、将来的な腎機能の低下が危惧されない方もいらっしゃいますが、それでも一度専門医の診断を受ければ患者さんの安心にもつながるでしょう。“とりあえずの紹介” でもまった<問題ありませんので、ぜひ紹介していただきたいと思います。
八幡先生 瀬田先生がおっしゃるとおりですね。高齢社会であれば、なおさら腎臓のチェックはしておいた方が良いと思います。また、かかりつけ医の先生にはHb値についても意識していただければと考えています。先ほど紹介したKFRA研究では、治療を意識することによって非専門医の先生方の考えも変わり、それに伴って治療効果が高まる状況になることが示唆されました。最近は腎性貧血に対する治療選択肢も広がっていますので、今後も連携を強化しながら、CKD患者さんの診療に携わりたいと考えています。
1)
国立社会保障・人口問題研究所日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)全都道府県・市区町村別の男女・年齢(5歳)階級別の推計結果(覧表)http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/t-page.asp(2021年3月23日閲覧)
2)
Yahata K. et al. Clin Exp Nephrol. 2019;23 (10) ; 1211-1220.
3)
Akizawa T. et al. Clin Exp Nephrol. 2011 ; 15 (2) ; 248 -257.

PROFILE

瀬田 公一 先生

独立行政法人国立病院機構 京都医療センター
腎臓内科診療科長・地域医痰部長

【資格】
日本腎臓学会 専門医・指導医
日本透析医学会 専門医・指導医
日本高血圧学会 専門医・指導医
日本内科学会 総合内科専門医・JMECCインストラクター
日本集中治療医学会 専門医
日本急性血液浄化学会 認定指導者
日本救急医学会 ICLSインストラクター
ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
京都大学医学博士

辻 一弥 先生

辻クリニック 院長/
一般社団法人 伏見医師会会長

【資格】
日本外科学会 指導医
日本消化器外科学会 専門医
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本肝臓学会 専門医
介護支援専門委員
医学博士

八幡 兼成 先生

日本赤十字社 大阪赤十字病院
腎臓内科 主任部長

【資格】
日本腎臓学会 専門医・指導医
日本透析医学会 専門医・指導医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会 総合内科専門医
京都大学医学博士

記事作成日:2021年8月

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