※本剤の効能又は効果は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。」
佐藤 直樹 先生
佐藤 2型糖尿病を合併するCKD患者を対象とした2つの国際共同第III相試験、FIDELIO-DKD試験とFIGARO-DKD試験を紹介します。両試験では全例にACE阻害薬またはARBによる標準治療を行い、ケレンディアを上乗せした際のプラセボに対する優越性を検証しています。
FIDELIO-DKD試験は、主に顕性アルブミン尿を伴うCKDステージ3-4の患者が対象となったのが特徴です。主要評価項目は、腎複合エンドポイント (腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的なeGFR低下、腎臓死)としました。主な副次評価項目は心血管複合エンドポイント (心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)でした。
その結果、 ケレンディアはプラセボに比べ、腎複合エンドポイントの発現リスクを18%有意に低下させました(p=0.0014a)) (図3)。さらに、心血管複合エンドポイントの発現リスクも14%有意に低下させました(p=0.0339a))。副作用はプラセボ群の15.9%に対し、ケレンディア群では22.9%に見られました。ケレンディア群で最も頻度が高い副作用は高カリウム血症で10.1%でした (表1)。
FIGARO-DKD試験では、CKD ステージ1-2の患者や微量アルブミン尿の患者が、それぞれ約半数を占め、比較的早期のCKD患者が対象となったのが特徴です。さらに評価項目もFIDELIO-DKD試験とクロスするように検討されました。心血管複合エンドポイント(FIDELIO-DKD試験の副次評価項目)を主要評価項目に、主な副次評価項目は腎複合エンドポイント(FIDELIO-DKD試験の主要評価項目)とされました。
その結果、ケレンディアはプラセボに比べ心血管複合エンドポイントの発現リスクを13% 有意に低下させました(p=0.0264b)) (図4)。一方、腎複合エンドポイントにおいては有意差には至らなかったものの、ハザード比は0.87(95%CI 0.76-1.01) (p=0.0689b)) でした。副作用はプラセボ群の11.3%に対し、ケレンディア群では15.2%に見られました。 ケレンディア群で最も頻度が高い副作用は高カリウム血症で5.7%でした(表1)。
綿田 2つの臨床試験の結果について、循環器医の立場からはどのようにとらえられているのでしょうか。
佐藤 両試験では特に心血管複合エンドポイントのKaplan-Meier生存曲線が、腎複合エンドポイントのそれに比べ早い段階から2群間で差が開いている点に注目しています。また、FIGARO-DKD試験の主要評価項目である心血管複合エンドポイントの構成要素のうち、心不全による入院リスクが29%有意に低下しました(p=0.0043b)) (図5)。古くから心腎連関の重要性が説かれ、心不全の発症は腎臓と強く関連することが知られています4)。ケレンディアにより心腎連関の負の連鎖を遮断することによりもたらされた結果であると考えられます。
2001年にARBによる腎保護効果が示されて以降8)9)、長らく新たな治療薬がありませんでした。そして約20年の時を経てSGLT2阻害薬によって腎機能のさらなる保護が可能となりました10)11)。そして、MRの過剰活性化を介した炎症と線維化を抑制することで心腎への直接的な効果が期待できるケレンディアが治療選択肢の1つに加わりました。2型糖尿病を合併するCKDの治療にパラダイムシフトがもたらされたといえるでしょう。
承認時評価資料 (Bakris GL, et al. N Engl J Med. 2020;383:2219-29.)
承認時評価資料 (Pitt B, et al. N Engl J Med. 2021;3852252-63)
MedDRA version: FIGARO-DKD 23.1、FIDELIO-DKD 23.0
SAF
承認時評価資料 (Pitt B, et al. N Engl J Med. 2021;385:2252-63./Bakris GL, et al. N Engl J Med. 2020;383:2219-29.)