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座談会

2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の早期診断・早期治療介入の意義

※本剤の効能又は効果は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。」

残余リスクの最小化を目指して

Key point

  • 未介入の病態・機序にフォーカスして残余リスクの最小化を目指す
  • 可逆性のある時期に最大限の治療手段を講じる
  • 腎臓専門医が治療計画を立て、かかりつけ医が日常診療を担当する併診を行い、その密度は重症度に応じて変えていく

これからの2型糖尿病合併CKD診療に求められるものは?

横尾 これからの2型糖尿病合併CKDの診療で重要なことは何でしょうか。

柏原 2型糖尿病合併CKDでは従来の薬物療法を行っても腎・心血管イベントのリスクを完全に抑制するには至っておらず27)、このアンメットニーズを解決していくことが重要です。残余リスクを最小化する方法の1つは、病態を精緻に解析し、未介入の病態を標的とした治療法を開発することです。炎症・線維化にはこれまで有効な介入方法がありませんでした。もう1つは、「早期」の既存概念を払拭して、病態が可逆性で心血管イベントリスクが上昇してくる時期に、より幅広くできる限りの治療介入をしていくことだと思います。従来の治療で効果が不十分であれば、早期から積極的にケレンディアを使っていくことが有用だと考えられます。

横尾 可逆性のある早期にリスクを見つけて病態を戻していくことを考えると、ケレンディアの使い方が鍵になりますね。

柏原 その通りです。ケレンディアはこれまで未介入であった2型糖尿病合併CKD患者の炎症・線維化を標的とすることから、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬やSGLT2阻害薬とどのように組み合わせて、あるいは使い分けていくのが効果的かということを今後議論していく必要があります。

横尾 それらの薬剤は逐次的に使うことを想定されていますか。

柏原 治せるものを最大限に治すことが臨床医の使命です。CKDの治療においては可逆性のある早期に、選択可能な治療を最大限投入することが患者さんのベネフィットにつながります。実臨床の現場では薬剤を順番に使っていくこともあるかもしれませんが、少なくとも可逆性が失われるような段階までケレンディアを選択肢のまま残しておくというのは適切ではないと考えています。CKD治療においては、まず腎・心血管イベントリスクに関して患者を安全域に導くことが最優先です。ポリファーマシーの問題は、安全域に移行した後で少しずつ薬剤を減らして解消することも可能です。もちろん、薬剤の使い方については、かかりつけ医の先生方ともディスカッションしていく必要があります。

円滑なCKD診療連携体制を実現させるために

横尾 早期のCKDは自覚症状に乏しいこともあり、尿検査で尿蛋白(±)や(+)と判定されてもかかりつけ医から腎臓専門医への紹介が遅くなることがあります。早期治療介入の重要性について、かかりつけ医への啓発をさらに行うべきではないかと思うのですが、かかりつけ医と腎臓専門医の両方で患者を診ていくためにはどのような取り組みが必要でしょうか。

柏原 かかりつけ医と専門医の連携が重要だといわれながら、かかりつけ医が専門医に紹介しても、RAS阻害薬の用量調整くらいしか対処法がなく、専門医に紹介する意義を見出しにくいという話もときどき伺います。確かにCKDの治療薬はこれまでRAS阻害薬が主体でしたが、今はSGLT2阻害薬、そしてMR拮抗薬が使えるようになりました。改めて、それらの使い分け、あるいは併用の必要性を専門医の視点で判断することが重要になってきています。治療計画は専門医が立て、日常診療はかかりつけ医主体で行い、CKDの重症度に応じて併診の密度を変えながら、二人三脚で取り組む診療体制をつくっていただきたいと考えています。また地方にいると、透析患者の受け入れ先が限られており、CKDの重症化を抑制するという切迫感が強いと思います。診療体制を広く日本全体で均てん化していくことが大事だと考えています。

横尾 なるほど「広く・早く・強く」がポイントですね。専門医が薬剤の選択や治療方針においてサポートし、実際の処方はかかりつけ医が行う体制は患者にとっても受け入れやすいと思います。
 明日からの診療に活かせる貴重なご意見やご提案をいただき、本日はありがとうございました。

参考文献

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https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001129120.pdf(閲覧日:2023年9月1日)

2)

花房規男, 他. 日透析医学会誌. 2021 ; 54 : 611‒57.

3)

糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ 日腎会誌. 2023 ; 65 : 847‒56.   
[COI : 著者にバイエルより講演料等を受領している者が含まれる。]

4)

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5)

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[COI : 著者にバイエルより助成金等を受領している者が含まれる。]

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[COI : 著者にバイエルより研究助成金等を受領している者が含まれる。]

10)

腎領域における慢性疾患に関する臨床評価ガイドラインの策定に関する研究班. 日腎会誌. 2018 ; 60 : 67-100.    
[COI : 著者にバイエルより奨学(奨励)寄附金等を受領している者が含まれる。]

11)

Perkovic V, et al. N Engl J Med. 2019 ; 380 : 2295-306.   
[COI : 著者にバイエルより運営委員会費等を受領している者が含まれる。]

12)

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[COI : 本研究はバイエルの資金により行われた。]

14)

承認時評価資料. バイエル社内資料[糖尿病性腎臓病患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)](Bakris GL, et al. N Engl J Med.2020 ; 383 : 2219-29.)   
[COI : 本研究はバイエルの資金により行われた。著者にバイエルよりコンサルティング料等を受領している者が含まれる。]

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Bärfacker L, et al. Chem Med Chem. 2012 ; 7 : 1385-403.

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Bakris GL. et al. Aldosterone Antagonists and CVD. American Col lege of Cardiology Jul 19, 2021.   
https://www.acc.org/Latest-in-Cardiology/Articles/2021/07/19/13/42/Aldosterone-Antagonists-and-CVD(閲覧日:2023年9月27日)

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Ninomiya T, et al. J Am Soc Nephrol. 2009 ; 20 : 1813-21.

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Wu B, et al. BMJ Open Diabetes Res Care. 2016 ; 4 : e000154.

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Nangaku M. J Am Soc Nephrol. 2006 ; 17 : 17-25.

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Fine LG, et al. Kidney Int. 2008 ; 74 : 867-72.

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Alicic RZ, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2017 ; 12 : 2032-45.

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Mora-Fernández C, et al. J Physiol. 2014 ; 592 : 3997-4012.

23)

Bauersachs J, et al. Hypertension. 2015 ; 65 : 257-63.   
[COI : 本研究の編集はバイエルの資金により行われた。著者にバイエルより研究支援等を受領している者が含まれる。]

24)

Tesch GH, et al. Front Pharmacol. 2017 ; 8 : 313.

25)

Nishiyama A. Hypertens Res. 2019 ; 42 : 293-300.

26)

Shibata H, et al. Am J Hypertens. 2012 ; 25 : 514-23.

27)

Giugliano D, et al. Cardiovasc Diabetol. 2021 ; 20 : 36.

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