※本剤の効能又は効果は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。」
綿田 SGLT2阻害薬とMRAの位置づけについては、どのようにお考えでしょうか。
深水 ACE阻害薬/ARBやSGLT2阻害薬による治療を行ってもアルブミン尿/蛋白尿が残存する患者や、eGFRが低下していく患者など、依然残余リスクが存在します。このような患者にはさらなる治療効果を期待してケレンディアの使用を積極的に検討していくべきでしょう。また、各薬剤の不適応例なども存在します。SGLT2阻害薬かケレンディアのどちらを選ぶかではなく、患者の状態に応じて相互に補完しながら両剤を適切に使い分ける、あるいは併用することで透析導入までの期間を延長することが大切だと考えています。今後、両薬剤によって、どれだけ残余リスクを減らすことができるかに期待したいところです。
佐藤 2型糖尿病を合併するCKD患者において、心臓と腎臓の両方のハードエンドポイントに対して効果が示された薬剤はありませんでした。そのような中、SGLT2阻害薬に続き、MRAのケレンディアのエビデンスが示され、治療の選択肢が広がったことに意義があると感じています。特に循環器疾患の発症や進展抑制においてはRAASの抑制が基本となります。ケレンディアによって心臓と腎臓に直接的なベネフィットが期待できることで、循環器領域ではこれまで以上にMRAが重要な位置づけになってくると思います。
綿田 最後にケレンディアへの期待についてお聞かせください。
深水 2型糖尿病を合併するCKD(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)に対し、ケレンディアが使用可能となったことは、腎臓領域においてもインパクトがありました。心腎連関の観点から、両臓器に対するベネフィットを示すエビデンスが2つの国際共同第III相試験で検証されたことに意義があり、CKDステージのより早期から投与されるべき薬剤と考えています18)19)。ただ、早期の患者さんは腎臓内科ではなく、糖尿病や循環器内科の先生方が診察されることが多くなります。早期からの治療介入を普及させていくうえでは、各領域の先生方との協力・連携が欠かせません。
佐藤 糖尿病やCKD、あるいは両者の合併は、心不全をはじめとする心血管疾患の発症にも関連し、人口の高齢化を背景に大きな課題となっています。その点からもFIGARO-DKD試験で見られたケレンディアによる心血管複合エンドポイントの有意な抑制 (p=0.0264b))、なかでも心不全による入院を抑制する結果が示されたことは、循環器医にとって意義のあることだと考えています(図5)。
透析導入や心血管疾患の抑止には、まずは糖尿病性腎症の兆候を見逃さないこと、そのためにはeGFRだけではなく、アルブミン尿の評価が重要であり、異常を認めれば積極的に治療介入していくべきです。その際、ケレンディアは重要な治療選択肢となるでしょう。
綿田 2型糖尿病患者の高齢化を背景に糖尿病に起因する透析導入数は高止まりを示しており、心不全をはじめとする心血管疾患の増加も課題となっています1)。これらのイベントを数年遅らせることができれば、国の総医療費が確実に下がります。2型糖尿病を合併するCKDに対する治療選択肢としてSGLT2阻害薬に続いてケレンディアが加わり、相互に補完あるいは併用するかたちで適正使用していくことで日本人の健康寿命がさらに延伸していくことを期待したいと思います。
先生方、それぞれのお立場から貴重なご意見をお聞かせいただき、ありがとうございました。
解析方法:層別 Cox比例ハザードモデルおよび層別Log-rank検定 (層別因子: アルブミン尿区分、地域、eGFRのカテゴリーおよび心血管疾患既往有無)
承認時評価資料 (Pitt B, et al. N Engl J Med. 2021385:2252-63.)
参考文献