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講演会記録集 2型糖尿病合併CKDにおけるMRAの役割

糖尿病関連腎臓病に対する診療2024
〜finerenoneへの期待〜

金﨑 啓造 先生 島根大学医学部内科学講座内科学第一 教授

Key point

  • DKDの治療は従来の血糖、血圧、脂質の管理に加え、心血管・腎イベント抑制効果が示された薬剤による治療が基本の柱である
  • ケレンディアは2型糖尿病合併CKDにおける腎・心血管イベント抑制のエビデンスを持つ薬剤の1つ

糖尿病関連腎臓病の疾患概念と治療

 糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)の病態は多様で定義が難しく、その疾患概念や呼称は世界的にも統一されていない。日本では最近まで典型例を糖尿病性腎症、非典型例も含む病態を糖尿病性腎臓病(DKD)とする概念を採用してきた1)。しかし、「糖尿病性」という言葉は「糖尿病が病態の本質に関わる」との意味を含み必ずしも実情とそぐわないことから、DKDを「糖尿病関連腎臓病」と訳すことが2023年に決定された2)
 DKDの予防や治療についても新たな考え方が登場している。従来、生活習慣の改善と血糖、血圧、脂質の管理が治療の柱であると考えられてきたが、それだけでは目標達成が難しい状況が続いてきた。近年、DKDにおける心血管および腎臓のイベント抑制に対してエビデンスを示した薬剤が登場し、従来の治療とともに重要な治療の柱と位置づけられるようになった3)。そのうちの1つが2022年に登場した非ステロイド型MR拮抗薬(MRA)ケレンディア(フィネレノン)である。

2つの大規模臨床試験で
腎・心血管イベント抑制を実証

 ケレンディアは2型糖尿病合併CKD患者における心血管および腎イベントのリスクを抑制することが示された初めてのMRAであり、その有用性は2つの大規模臨床試験FIDELIO-DKD4)およびFIGARO-DKD5)で示された。腎複合エンドポイント〔腎不全、推算糸球体濾過量(eGFR)40%以上低下、腎臓死〕を主要評価項目としたFIDELIO-DKDでは、RAS阻害薬にケレンディアを追加投与することによりプラセボ群と比べ腎イベントの発現リスクが18%有意に低下することが検証された(HR0.82、95%CI0.73~0.93、P=0.0014)*1。また、心血管複合エンドポイント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)を主要評価項目としたFIGARO-DKDでも同様に、ケレンディアの追加投与により心血管イベントの発現リスクが13%有意に低下することが検証された(HR0.87、95%CI0.76~0.98、P=0.0264)*2

*1

解析方法:層別Cox比例ハザードモデルおよび層別Log-rank検定(層別因子:アルブミン尿区分、地域およびeGFRのカテゴリー)

*2

解析方法:層別Cox比例ハザードモデルおよび層別Log-rank検定(層別因子:アルブミン尿区分、地域、eGFRのカテゴリーおよび心血管疾患既往有無)

 これらの結果を踏まえ、『米国糖尿病学会(ADA)診療ガイドライン2025』では、アルブミン尿を呈するCKD患者においてCKDの進展と心血管イベントを抑制するために、臨床試験で有効性が示されている非ステロイド型MRAの使用が推奨されている(エビデンスレベルA)6)。日本糖尿病学会の『糖尿病診療ガイドライン2024』でも、「ACE阻害薬あるいはARBによる治療中でアルブミン尿を有する糖尿病患者において、非ステロイド型MRA(フィネレノン)は、腎症の進行抑制に寄与し得る」としている(推奨グレードB)7)

高リスク症例ほど早期から
エビデンスのある治療薬による積極的な介入が重要

 CKDの治療に当たり、腎機能(eGFR)の低下を腎臓の解剖学的な変化と関連づけて捉えることが重要である。eGFR100mL/分/1.73m2 が片腎当たり約100万個の糸球体(ネフロン)によってもたらされるとすると、eGFR1mL/分/1.73m2 はネフロン2万個分に相当する。eGFRの低下はネフロンの消失と密接に関連しており、1年間にeGFRが5mL/分/1.73m2 低下する症例ではネフロンが約10万個減少、1時間では11個失っている計算となる。ネフロンの消失が顕著な高リスクの症例には、可能な限り早期にエビデンスの確立した治療を積極的に導入すべきと考えている。
 現時点で2型糖尿病合併CKD患者における心血管および腎臓イベントの抑制に対してエビデンスを有する薬剤はRAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型MRA(ケレンディア)、GLP-1受容体作動薬*3 の4種類であり()、それぞれ国内外のガイドラインで治療薬として推奨されている6,7)。高リスク症例ではこれらの薬剤の併用療法も有用と考えられる。

*3

日本において、GLP-1受容体作動薬に慢性腎臓病の適応はない

 FIDELIO-DKDとFIGARO-DKDの統合解析であるFIDELITYのサブグループ解析において、SGLT2阻害薬使用の有無にかかわらず、ケレンディア群ではプラセボ群よりも腎および心血管イベントの発現率が低いことが示された(8-9)。尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)もSGLT2阻害薬の使用にかかわらず、ケレンディア群ではベースラインより低値で推移した10)。作用機序が異なる両者の併用はより積極的な治療を行う上で有用な治療選択肢の1つと考えられる。
 ケレンディアの処方対象として3つの患者像が考えられる。1つ目はRAS阻害薬を投与しても微量アルブミン尿が残存する患者である。尿アルブミンの残存は大きなリスクであるため、このような患者ではケレンディアを処方すべきである。2つ目は顕性アルブミン尿(尿蛋白陽性)を呈する患者である。このような患者では急速に腎機能が低下していると考えられるため、できるだけ早期にSGLT2阻害薬と同時期にケレンディアを開始する必要がある。3つ目はフレイルや尿路感染症のリスクがあるなど、SGLT2阻害薬の投与に注意を要する患者である。このような患者ではSGLT2阻害薬よりもケレンディアを先行することも考慮される。
 島根県では2019年からDKD症例に対してエビデンスを持つ薬剤による積極的な治療介入を推進しており、それ以降、透析患者数ならびに新規透析患者数の増加は抑制傾向にある11)。エビデンスに裏付けられた薬剤を用いた積極的介入の意義を理解していただき、DKD治療に臨んでいただければ幸いである。

2型糖尿病合併CKD患者における心血管・腎イベント抑制のための治療薬

〔American Diabetes Association Professional Practice Committee. Diabetes Care 2025; 48: S207-S238、American Diabetes Association Professional Practice Committee. Diabetes Care 2025; 48: S239-S251、日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2024, p.189, 南江堂,2024、Rossing P, et al. Diabetes Obes Metab 2024; 26(Suppl.6):13-21より演者改変〕

SGLT2阻害薬有無別に見た有効性評価項目(心血管・腎イベント)[FIDELITYサブ解析]

〔Agarwal R, et al. Eur Heart J 2022 ; 43 : 474 -484 . Bakris GL, et al. Kidney Int 2023 ; 103 : 196-206.より抜粋・作表〕
[COI]本試験はバイエルの資金により行われた。また、著者にバイエルの社員およびバイエルよりコンサルト料などを受領している者が含まれる。

参考文献

1)

日本腎臓学会.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.東京医学社,2023.

2)

金﨑啓造,他.糖尿病2024;67:43-49.

3)

American Diabetes Association Professional Practice Committee. Diabetes Care 2022;45:S144‒S175.

4)

Bakris GL, et al. N Engl J Med 2020;383:2219-2229.

5)

Pitt B, et al. N Engl J Med 2021;385:2252-2263.

6)

American Diabetes Association Professional Practice Committee. Diabetes Care 2025;48:S239-S251.

7)

日本糖尿病学会編/著.糖尿病診療ガイドライン2024. https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

8)

Agarwal R, et al. Eur Heart J 2022;43:474-484.

9)

Bakris GL, et al. Kidney Int 2023;103:196-206.

10)

Rossing P, et al. Diabetes Care 2022;45:2991-2998.

11)

日本透析医学会.わが国の慢性透析療法の現況
COI:4,5,8)の研究はバイエルの資金により実施された。また、著者にバイエルの社員およびバイエルよりコンサルタント料などを受領している者が含まれる。

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