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座談会

2型糖尿病合併慢性腎臓病(CKD)の進行要因とMR拮抗薬ケレンディア

益崎裕章 先生 琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)教授

Key point

  • 2型糖尿病合併CKDの進行・悪化要因の1つである炎症および線維化に着目し、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬ケレンディアが開発された
  • ケレンディアは2型糖尿病合併CKDを対象とした2つの大規模臨床試験において、腎複合エンドポイント(FIDELIO-DKD試験)および心血管複合エンドポイント(FIGARO-DKD試験)の発現リスクを低下させた
  • 新たな薬剤の登場で2型糖尿病合併CKDへの早期治療介入が可能となり、治療のパラダイムシフトが期待される

2型糖尿病合併CKD治療のアンメットニーズとしての炎症・線維化抑制

 2型糖尿病患者の半数近くはCKDを合併していることが報告されています1)-3)。また、2型糖尿病で、アルブミン尿とGFR(糸球体ろ過量)低下の両方が認められる患者は、両方とも認められない患者に比べ10年間の累積調整死亡率が大きく上昇することが報告されています4)。アルブミン尿とGFR低下の合併は、腎障害のみならず、死亡につながる心血管イベントのリスクも高めることに留意して診療に当たらなければなりません5)
 2型糖尿病合併CKDの三大進行・悪化要因としては、高血圧症などの血行動態異常6)7)、糖尿病などの代謝異常6)7)、そして慢性炎症に対する過剰な修復機転としての臓器の線維化6)7)が知られています。血行動態と代謝の異常については、近年のめざましい薬物療法の進歩により一定のコントロールが可能となりましたが、臓器の炎症および線維化の抑制はアンメットニーズとして残されていました。そこで、心臓や腎臓における炎症および線維化の増悪にミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰活性化が関与している8)ことに着目してMR拮抗薬ケレンディアの開発が進められ、有効性と安全性のエビデンスが示されました9)10)(図1)

【図1】
2型糖尿病合併CKD治療のアンメットニーズとしての炎症・線維化抑制

※ナトリウム貯留、臓器肥大など

6)
Alicic RZ, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2017 ; 12 : 2032‒45.,
7)
Mora-Fernández C, et al. J Physiol. 2014 ; 592 : 3997‒4012.,
8)
Bauersachs J, et al. Hypertension. 2015 ; 65 : 257‒63.より作図

ケレンディアのエビデンス

 2型糖尿病合併CKD患者を対象とした2つの国際共同第Ⅲ相試験において、標準治療にケレンディアを上乗せした結果、プラセボに対する優越性が検証されました。2型糖尿病を合併するCKDの予後を改善するには、腎イベントおよび心血管イベントの両者の発生を抑える必要があります。しかし、1つの試験でこの2つのイベントに対する抑制効果を検証するのは難しいことから、比較的進行したCKDステージの患者を対象に、主に腎イベントについて検討したFIDELIO-DKD試験と、比較的早期のCKDステージの患者を対象に、主に心血管イベントについて検討したFIGARO-DKD試験の2つが実施されました。

FIDELIO-DKD試験9)

 FIDELIO-DKD試験は、主に顕性アルブミン尿を伴うCKDステージ3-4の患者を対象に実施されました。主要評価項目は、腎複合エンドポイント(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的なeGFR[推算GFR]低下、腎臓死)、主な副次評価項目は心血管複合エンドポイント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)に設定されました。
 その結果、腎複合エンドポイントは、ケレンディア群がプラセボ群に比べ、発現リスクを18%有意に低下させました(HR 0.82、95%CI 0.73-0.93、p=0.0014a))。さらに、心血管複合エンドポイントの発現リスクも14%有意に低下させました(HR 0.86、95%CI 0.75-0.99、p=0.0339a))。
 副作用はプラセボ群の15.9%に対し、ケレンディア群では22.9%に見られました。ケレンディア群で最も頻度が高い副作用は高カリウム血症で10.1%でした。

FIGARO-DKD試験10)

 FIGARO-DKD試験では、CKDステージ1-2の患者や微量アルブミン尿の患者が、それぞれ約半数を占め、比較的早期のCKD患者を対象に実施されました。評価項目はFIDELIO-DKD試験とクロスするかたちで設定され、主要評価項目が心血管複合エンドポイント(FIDELIO-DKD試験の副次評価項目)、主な副次評価項目が腎複合エンドポイント(FIDELIO-DKD試験の主要評価項目)とされました。
 その結果、心血管複合エンドポイントは、ケレンディア群がプラセボ群に比べ発現リスクを13%有意に低下させました(HR 0.87、95%CI 0.76-0.98、p=0.0264b))。一方、腎複合エンドポイントは有意差には至らなかったものの、ハザード比が0.87(95%CI 0.76-1.01、p=0.0689b))でした。
 副作用はプラセボ群の11.3%に対し、ケレンディア群では15.2%に見られました。ケレンディア群で最も頻度が高い副作用は高カリウム血症で5.7%でした。

益崎 裕章 先生

益崎 裕章 先生

a)
層別log-rank検定(層別因子:アルブミン尿区分、地域およびeGFRのカテゴリー)
b)
層別log-rank検定(層別因子:アルブミン尿区分、地域、eGFRのカテゴリーおよび心血管疾患既往有無)

早期介入の重要性

 2型糖尿病合併CKDでは、血圧、循環、代謝に対して治療していても心血管疾患を発症したり、腎障害が進行してしまう患者が存在します。CKDの進行を抑制するにはより早期からの治療介入が重要ですが、これまではアルブミン尿が認められ、CKDが進行してから標準治療の強化を検討し、残念ながら十分な効果が得られないということもありました(図2)。ケレンディアなどの2型糖尿病合併CKDにおける腎および心血管イベントの抑制効果が示された薬剤が登場したことで、CKDに対してより早期からの治療介入が可能となり、2型糖尿病合併CKDの治療にパラダイムシフトがもたらされることが期待されます。

【図2】
慢性腎臓病における早期治療介入の重要性(イメージ図、海外データ)

アルブミン尿を呈する患者と正常アルブミン尿患者のeGFRの低下を表したイメージ図。後期治療介入時の勾配の変化(検証済み)と早期治療介入時の勾配の変化(予測)を示している。
方法:オランダの前向き観察研究PREVENDの登録患者のうち6,879例から得られたデータ(6.2年間に得られた3つのデータポイント)から、eGFRの低下の傾きについて算出した。

Gansevoort RT, et al. J Am Soc Nephrol. 2009 ; 20 : 465-8.

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