― 岡山県では、「岡山県CKD・CVD対策専門会議」が中心となってCKDの重症化予防に取り組んでいますね。
内田先生 はい。2012年、第2次地域医療再生計画 糖尿病等生活習慣病医療連携推進事業において、岡山県生活習慣病対策推進会議 CKD・CVD対策専門部会が発足しました。2016年に事業再編が行われて部会は岡山県CKD・CVD対策専門会議となり、行政、医師会、看護協会、栄養士会、薬剤師会などが協力し、CKD・CVD医療連携体制の構築、県民への普及・啓発を推進しています(図1)。
― 名称にCKD(慢性腎臓病)とともにCVD(心血管疾患)が入っているのは珍しいのではないでしょうか。
内田先生 そうですね。これは岡山県のCKD対策のキーとなる部分でもあります。CKDの患者さんは、重症化する前であってもCVDのイベント発生やそれによる死亡リスクが高まることや、心臓と腎臓が深く関係していることがここ10~15年で明らかになってきました。つまり、CKDの重症予防には同時にCVDの予防が含まれていると言えるわけです。日ごろから岡山県の腎臓専門医はこういった意識が高いことから、新規透析導入の減少と、CKDに伴うCVD合併およびCVDによる死亡の減少を目指し、名称で明言しました。
― 岡山県のCKD・CVD対策の活動の背景や経緯などについて教えてください。
内田先生 岡山県の人口は現在約188万人ですが、地域によって偏りがあります。“県北”には中国山地があり、広域にもかかわらず人口も腎臓専門医も少ないエリアがある一方、岡山市や倉敷市がある“県南”は、新幹線も通っていて交通の便もよく、人口や腎臓専門医も県北より多いエリアです。
こういった、人口、腎臓専門基幹病院、腎臓専門医の地域偏在がある中で、まず、2007年に岡山市でCKDの医療連携体制としてOCKD-NETが立ち上がり、同時にCKDに関する普及・啓発活動が始まります。その後、冒頭でお話しした岡山県CKD・CVD対策専門会議が開設され、行政主体の特定健診フォローアップ事業、メディカルスタッフの人材育成などへ取り組みが拡がりました。現在も新たな活動を進める中で、リーフレットや冊子などの活動支援ツールも充実し、県内各地で活用されています。
このように、岡山県のCKD・CVD対策は地域から県全体へと、一歩ずつ一歩ずつ進んできました。