地域や患者さんとの信頼関係が要
CKD医療連携への取り組み
北海道旅客鉄道株式会社 JR札幌病院
副院長 腎臓内科科長
吉田 英昭 先生
専門医は紹介患者さんを治療に導く案内人
ドロップアウトさせない環境づくりを
― 吉田先生が、CKDの紹介患者さんの診療を行う上で特に気を付けている点について教えてください。
吉田先生 CKDの早期には自覚症状がほとんどないこともあって、中には自身の状態をあまり理解できていない患者さんもいます。そのため、最初の診察では2つのことを心がけています。1つは、かかりつけ医の先生が何を心配して当院に紹介したのか、専門医が診る理由をしっかりと伝えることです。2つ目は、今後の治療の見通しと方向性を明確にすることです。紹介患者さんへの腎臓専門医のもっとも重要な役割の1つが、治療をドロップアウトしてしまわないよう、患者さんの考えと気持ちの交通整理をして、治療へと導く案内人になることだと思っています。
― 患者さんのモチベーションの維持が大事なのですね。
吉田先生 しかし、そこが難しいのです。たとえば高血圧の治療のように数値が明らかに改善されると治療がうまくいっているという実感を持ってもらえるのですが、腎機能の値は加齢によっても下がるために大きく戻ることがあまりなく、治療の手応えをなかなか感じてもらえません。そのため、腎機能が維持できていれば、または下がっていても加齢による場合とペースが変わらないのであれば治療がうまくいっていると考えてよいなど、患者さんには時間をかけて、治療効果の目安を繰り返しお話しするようにしています。
連携においては、かかりつけ医との信頼関係が大切であると最初にお話ししましたが、治療の継続においては患者さんとの信頼関係は不可欠です。コミュニケーションを重ねる中で患者さんが治療について“共通理解”を持ち、「専門医を紹介してもらってよかった」と思っていただいて、初めて次の治療へとつながっていきます。
連携においては、かかりつけ医との信頼関係が大切であると最初にお話ししましたが、治療の継続においては患者さんとの信頼関係は不可欠です。コミュニケーションを重ねる中で患者さんが治療について“共通理解”を持ち、「専門医を紹介してもらってよかった」と思っていただいて、初めて次の治療へとつながっていきます。
― 最後に、CKDの重症化予防における課題についてお考えをお聞かせください。
吉田先生 まず、CKD予備軍の方々への働きかけです。たとえば、市民公開講座などに来てくれる方はすでに治療を行っている患者さんがほとんどで、予備軍の方にはなかなか来てもらえません。早期発見、早期介入を行っていくためにも、CKDについて、また、重症化予防の入り口である健診受診の必要性について予備軍の方々へどう伝えていくか、アプローチの工夫が必要だと思います。
また、健診受診の促進だけではなく、受診者の中から抽出したリスクのある方を確実に治療へとつなげる道筋も整え、治療を受ける前にドロップアウトさせないようにしなければなりません。自治体の保健師の方々からお話を聞くと、健診の結果から治療の必要な方に専門医受診を促しても、どこに行けばよいかわからず受診しないままになる場合も多いことから、さっぽろ北部CKDねっとのような専門医のリストがあるとお話ししやすいという声もありました。今後は、保健師の介入をサポートする環境の整備も必要です。
また、健診受診の促進だけではなく、受診者の中から抽出したリスクのある方を確実に治療へとつなげる道筋も整え、治療を受ける前にドロップアウトさせないようにしなければなりません。自治体の保健師の方々からお話を聞くと、健診の結果から治療の必要な方に専門医受診を促しても、どこに行けばよいかわからず受診しないままになる場合も多いことから、さっぽろ北部CKDねっとのような専門医のリストがあるとお話ししやすいという声もありました。今後は、保健師の介入をサポートする環境の整備も必要です。
― 連携体制の充実とともに、いろいろな取り組みが必要であることがわかりました。
吉田先生 ただ、課題はたくさんありますから、最初から100点満点を目指すのではなく、60点が合格点なら次は65点を、その次は75点をと、少しずつ前を目指して進まなければ長続きしません。これからもかかりつけ医の先生方との、そして患者さんとの信頼関係を構築しながら、CKD医療連携の充実と重症化予防の環境づくりにしっかりと取り組んでいきたいと思います。
取材日:2021年4月7日
記事作成日:2021年8月